2026/11/04 18:22





















KEELA HERITAGE KINTYRE JACKET MOSS
防水衣料の製造技術から生まれたKEELAが手掛ける、HERITAGEという選択。
大きなフラップポケットと、二重のストームフラップを備えた厚みのある前立て。KEELAのKINTYRE JACKETを見ていると、アウトドアウェアが歩んできた歴史と、その造形の面白さを改めて感じる。素材の高機能化とともに、アウトドアウェアの姿も大きく変わってきた。軽量化を追求した生地、身体の動きを考えた立体的な裁断、必要な機能を小さくまとめた合理的なディテール。現代のアウトドアジャケットには、長年にわたる技術開発の成果が詰め込まれている。
一方で、昔ながらの英国アウトドアウェアには、今見ても惹きつけられる独特の格好良さがある。大きなフラップポケット、雨風を防ぐための厚みのある前立て、腰まわりを覆う長めの着丈。必要な機能がそのまま外観に表れ、ひとつひとつのディテールが服の表情をつくっている。そこには、機能を追求した結果として生まれた造形の面白さがある。
今回紹介するKEELAのHERITAGE KINTYRE JACKETは、そんな英国アウトドアウェアの伝統的な姿に、現代の防水透湿素材を組み合わせた一着だ。通常のKINTYRE JACKETが持つ実用的な構造を受け継ぎながら、ドローコードやストッパー、ブランドタグなど、一部にHERITAGE COLLECTION専用の仕様を採用。今回のMOSSという落ち着いたグリーンも相まって、クラシックな魅力が一層際立っている。
そして僕がこのジャケットに強く惹かれる理由は、単に見た目が好みだからではない。これをつくっているのが、防水衣料の製造技術を長年にわたって研究し、軍や警察、山岳救助などの現場に向けた製品まで展開してきたKEELAだからだ。そうした技術を持つメーカーが、昔ながらの英国アウトドアウェアの姿を残したジャケットをつくっている。ここに、この服をLAMPAで紹介したいと思った大きな理由がある。
KEELAの歴史と防水衣料の製造技術
KEELAは1989年、英国スコットランドで誕生したアウトドアブランド。その背景を辿ると、1973年に設立されたArdmelという会社に行き着く。
Ardmelの創業者Rube Fernandoは、スリランカからスコットランドへ渡り、グラスゴーにあった世界的なミシンメーカーSINGERの工場で働いた経験を持つ技術者だった。その後、自ら会社を設立し、防水衣料の製造に必要な機械や加工技術の開発に取り組んでいく。
防水ジャケットを製造するうえで、避けて通れない問題がある。それが縫い目からの浸水だ。どれほど防水性の高い生地を使用していても、ミシンで縫えば針穴が生まれる。その針穴を塞ぐために重要となるのが、縫い目の裏側に専用のテープを熱圧着するシームシーリングという技術である。
Ardmelは1970年代後半、自社開発のシームシーリングマシンMK-1を生み出した。縫い目に専用のテープを熱圧着するこの技術は、防水衣料の製造技術に大きな進歩をもたらした。
そして、この技術は自社の製造現場だけにとどまらなかった。Ardmelは防水衣料の製造機械を他社にも供給し、衣料品メーカーの製造現場を技術面から支える存在となっていく。
さらにArdmelの工場では、英国を代表するアウトドアブランドのひとつであるBerghausなど、他社ブランドのアウターウェアも製造していた。ここが実に興味深い。完成した衣服をつくる技術と、その製造に必要な機械を開発する技術。その両方を持つ会社だったのである。
服をつくる現場で何が問題になるのか。どこに技術的な改善の余地があるのか。防水性の高い生地を開発するだけでは解決できない、縫製や加工の問題にまで向き合ってきた歴史がある。
そうした技術的な背景から1989年に誕生したのがKEELAだ。それまで他社の製造を支えてきた会社が、自らの技術と考え方を反映したアウトドアブランドを立ち上げたのである。
二度の英国女王賞と技術革新
KEELAは自社ブランドの設立後も、アウトドアウェアの技術開発を続けていく。その代表的な成果のひとつが、System Dual Protection、通称SDPだ。
防水衣料において重要なのは、外からの雨を防ぐことだけではない。身体から発生する湿気や、衣服内部で起こる結露をどう管理するか。KEELAはそうした問題にも取り組み、異なる役割を持つ層を組み合わせた独自の衣服構造を開発してきた。
その技術開発は英国でも高く評価されている。2006年には関連会社が衣料品の構造や素材加工に関するAdvanced Construction Technology、通称ACTによって英国女王賞を受賞。さらに2008年には、KEELAが開発したSDPの技術革新が英国女王賞を受賞している。
衣服の構造や製造技術そのものを研究してきた企業グループが、異なる技術によって二度の評価を受けたという事実は、KEELAの背景を知るうえで非常に重要だ。
現在もKEELAは、一般向けのアウトドアウェアに加え、軍や警察、消防、山岳救助などの専門的な用途に向けた製品を展開している。こうした現場では、衣服の性能が実際の活動に直結する。だからこそ、製品の開発や検証においても、実用性が重視されている。
防水衣料の製造機械を開発してきた会社から生まれ、衣服内部の結露管理まで研究し、今も専門的な現場に向けて製品を送り出している。KEELAは、そうした歴史を持つアウトドアブランドなのだ。
HERITAGE COLLECTIONの魅力
今回のHERITAGE KINTYRE JACKETは、通常のKINTYRE JACKETが持つ基本的な構造や機能を受け継ぎながら、一部のパーツに専用仕様を取り入れたモデルだ。ドローコードやストッパー、ブランドタグなど、細かな部分に通常モデルとの違いが見られる。
ジャケットそのものの形や機能を大きく変更するのではなく、細部の選択によってクラシックな印象を引き立てている。
もともとKINTYRE JACKETは、大きなフラップポケットや厚みのある前立て、長めの着丈など、昔ながらの英国アウトドアウェアを思わせる造形を持っている。そこにHERITAGE専用のパーツが加わることで、その方向性がより明確になる。
そして今回のMOSSという色合いも、このジャケットの雰囲気によく馴染んでいる。HERITAGEという名前を大げさに主張するのではなく、服全体の佇まいから、その魅力が伝わってくる一着だ。
防水透湿素材 RAINLIFE 5000
HERITAGE KINTYRE JACKETに採用されているのは、KEELAが開発したRAINLIFE 5000という防水透湿素材だ。防水性、防風性、透湿性を備え、外からの雨や風を防ぎながら、衣服内部で発生する水蒸気を外へ移動させることを考えて開発されている。
RAINLIFE 5000には、表面に質感を持たせた生地と、親水性の防水コーティングが採用されている。親水性のコーティングは、水蒸気の移動を促すことで透湿性を確保する仕組みだ。
外から入り込もうとする雨水を遮りながら、身体から発生する湿気を外へ移動させる。雨の中で着るジャケットにとって、防水性と透湿性の両立は重要な要素となる。
さらに防風性も備えており、雨だけでなく風への対応も考えられている。天候が変わりやすいスコットランドを拠点とするKEELAが、こうした素材を採用していることにも、このブランドらしさが感じられる。
そして、この生地は見た目にも魅力がある。表面には光沢を抑えたマットな質感があり、昔ながらのアウトドアジャケットを思わせる落ち着いた表情を持っている。現代の防水透湿素材でありながら、過度にテクニカルな印象を与えず、クラシックな造形とも自然につながっている。
内側にはメッシュの裏地を備え、表地と身体の間に一枚の層を設けた構成。外側の生地が雨風への対応を担い、内側には衣服としての着用感を考えた仕様が取り入れられている。
英国アウトドアウェアの伝統的なデザインを楽しみながら、素材には現在の防水透湿技術を採用する。この組み合わせが、KINTYRE JACKETの大きな魅力となっている。
MOSSの色合いと立体的な造形
今回LAMPAが紹介するカラーはMOSS。苔を思わせる落ち着いたグリーンで、英国の自然やカントリーウェアを連想させる色合いだ。
鮮やかさを前面に出したグリーンではなく、深みを感じさせる落ち着いた色調。その色がRAINLIFE 5000のマットな生地と組み合わさることで、HERITAGE KINTYRE JACKETのクラシックな魅力をさらに引き立てている。
特に目を引くのが、MOSSの生地の上に重なる大きなフラップポケットと、二重のストームフラップによって厚みが生まれた前立てだ。平面的な色の広がりの中に、ポケットの輪郭や前立ての重なりが立体感をつくり出している。
ゆとりを持たせた身幅も含め、それぞれの造形が持つ力強さとMOSSの落ち着いた色合いがうまく調和している。
英国アウトドア文化とポケット構造
フロントには、右胸にひとつ、腰の左右にふたつ、大きなフラップポケットを配置。それぞれにフラップとファスナーを備え、雨の中で収納物を保護することを考えた構造になっている。
腰のポケットには、収納部分とは別に横から手を差し込めるハンドウォーマーポケットも設けられている。物を収納する役割と、手を入れる役割を分けることで、ひとつのポケットまわりに複数の機能を持たせている。
さらに興味深いのが、表からは目立たない位置に設けられたマップポケットだ。英国では、Ordnance Survey、通称OSが発行する地形図が、ハイキングや登山で長く利用されてきた。
スマートフォンやGPSが普及する以前、地図を携帯し、必要なときに取り出せることは、アウトドアウェアに求められる重要な機能だった。そうした英国のアウトドア文化を感じさせる仕様が、このジャケットにも受け継がれている。
こうしたポケットの配置を見ると、KINTYRE JACKETが持つクラシックなデザインの背景が見えてくる。収納物を保護するためのフラップ、手を入れるための独立した開口部、地図を携帯するためのポケット。
それぞれに実用的な意味があり、その構造が服の外観にも表れている。だからこそ、これだけ多くのディテールを備えていても、単なる装飾の集まりには見えないのだ。
前立てと収納式フード
フロントには、上下どちらからも開閉できるダブルジッパーを採用。その上を二重のストームフラップが覆う構造になっている。ファスナー部分に雨風が直接当たりにくくなるよう考えられた仕様であり、前立ての重なりはジャケットの外観にも厚みを生み出している。
この前立ての存在感も、昔ながらのアウトドアジャケットらしい格好良さを感じさせる部分だ。
フードは襟部分に収納できる仕様で、必要なときに取り出して使用できる。フードの縁には形状を調整できるワイヤーが入り、顔まわりの形を整えられる設計だ。
袖口にはゴムと面ファスナーによる調整機構を備え、手首まわりの開きを変えられる。雨風への対応を考えた機能が、こうした細かな部分にも取り入れられている。
ウエストと裾にはドローコードを配置。身幅のゆとりを生かした着方から、絞りを加えて輪郭に変化をつける着方まで、シルエットを調整できる構造になっている。
さらに、KEELAのSkye Pro Fleeceを内側に連結できるジップイン仕様も備えている。対応するフリースを取り付けることで、防水透湿素材を使用した外側のジャケットと、保温用の衣服を組み合わせられる。
ポケット、前立て、フード、袖口、ドローコード、ジップイン。それぞれの仕様を見ていくと、KEELAが実用的なアウトドアウェアをつくり続けてきたメーカーであることが伝わってくる。
見た目には昔ながらの英国アウトドアジャケットの魅力を残しながら、その構造には現在のアウトドアウェアとして必要な機能が組み込まれている。
シルエットと日常のスタイリング
シルエットは、身幅にゆとりを持たせたレギュラーフィット。着丈も比較的長く、腰まわりを覆う設計になっている。身体の線を強調しないゆったりとした輪郭が、昔ながらの英国アウトドアウェアらしい姿をつくり出している。
ウエストと裾のドローコードによって、ゆとりをそのまま生かすことも、絞りを加えてシルエットを変化させることもできる。
LAMPAでは、このジャケットをアウトドア専用の衣服としてだけでなく、普段の服装の中でも楽しみたいと考えている。
例えばデニムと合わせれば、英国のアウトドアウェアが持つ無骨な表情が自然に生きてくる。チノパンツと組み合わせれば、カントリーウェアにも通じる落ち着いた装いになる。
ここで魅力となるのが、MOSSの色合いとクラシックなシルエットだ。大きなポケットや長めの着丈がジャケットの輪郭をつくり、その落ち着いたグリーンが全体の印象をまとめてくれる。
機能素材を使用したアウトドアジャケットでありながら、昔ながらのカジュアルウェアとも自然につながる。このバランスも、LAMPAがこのモデルを選んだ理由のひとつだ。
KEELAが受け継ぐ英国の伝統
HERITAGE KINTYRE JACKETを見ていると、服の面白さは、デザインや素材の説明だけでは語りきれないと感じる。
最初に目を引くのは、昔ながらの英国アウトドアウェアを思わせる格好良さだ。しかし、ポケットや前立て、フードなどの構造を見ていくと、それぞれに実用的な意味があることが分かる。そして、その服をつくっているKEELAの歴史を知ることで、さらに興味が深まっていく。
防水衣料の製造機械を開発し、他社のアウターウェアを製造していた会社から生まれたブランド。衣服内部の結露管理にまで取り組み、その技術革新が英国女王賞によって評価され、現在も軍や警察、山岳救助などの現場に向けた製品を展開している。
そんなメーカーが、今も英国アウトドアウェアの伝統的な姿を大切にしたジャケットをつくっている。しかも、現代の防水透湿素材と実用的な構造を備えたうえで、そのクラシックな魅力を残している。ここに、この服ならではの面白さがある。
KEELA HERITAGE KINTYRE JACKET MOSSは、英国アウトドアウェアの伝統的な格好良さと、現代の防水透湿技術を併せ持つ一着です。大きなポケットや厚みのある前立て、MOSSの落ち着いた色合い、そしてHERITAGE仕様の細かなパーツ。そのひとつひとつに魅力があります。そして何より、防水衣料の製造技術を追求してきたメーカーが、今もこうした英国アウトドアウェアの伝統的な姿を大切にしている。その事実こそ、このジャケットをLAMPAで紹介したかった一番の理由です。
