2026/10/29 16:37



LAMPA CITY STANDARD
~東京カジュアルの正統派~
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A VONTADE BAGGIES JACKET VTD-0583-JK

80年代のアウトドアの自由な造形を再構築。
都会の男が着るバギージャケット。

古いアウトドアウェアには、今の服にはない面白さがある。必要な機能を備えながら、どこか自由で、形にも独特な癖がある。現在のアウトドアウェアが軽量化や機能性を追求し、用途に応じて細かく進化してきたのに対し、1980年代の服からはもっと大らかな発想が見えてくる。ゆったりとした身頃、大きなポケット、合理的でありながら少し変わったディテール。今あらためて見ても、古さより先にデザインの面白さを感じる服が確かにある。

服を長く見続けていると、古いデザインを忠実に再現することだけが正解ではないと感じる。昔の服が持っていた面白さを残しながら、今の素材や用途に合わせて手を加える。その変更にきちんと理由がある服には、復刻とは違った魅力がある。元のデザインを理解しているからこそ、何を残し、何を変えるのか。その判断に作り手の考えが表れるからだ。

今回紹介するA VONTADEのBAGGIES JACKETは、1980年代のアウトドアジャケットをイメージソースにした中綿ジャケット。当時のバギーズジャケットを思わせる大らかな造形を取り入れながら、特徴的な前立てやポケットを独自にアレンジしている。さらに、コートを思わせる高密度コットンナイロンウェザーと厚みのあるシンサレートを組み合わせることで、軽快なアウトドアジャケットのデザインを、しっかりと冬のアウターへと組み直している。

高密度コットンナイロンウェザー

まず触れておきたいのが、この表地だ。使用しているのは、高密度に織り上げたコットンナイロンのウェザー生地。糸を密に打ち込むことで生まれるしっかりとしたハリとコシがあり、手に取った瞬間から生地そのものの存在を感じる。薄く軽いナイロンシェルとは違い、生地自体に形を支える力があるため、身頃や袖が身体にくったりと沿いすぎず、ジャケット全体の輪郭を保ってくれる。

そこへ微起毛加工を施し、表面にごく細かな毛羽を持たせている。高密度生地のしっかりとした感触を残しながら、手に触れたときの硬質さを和らげ、滑らかな手触りへと仕上げているのがいい。細かな毛羽によって光の反射も穏やかになり、表面には自然な陰影が生まれる。ハリのある生地なのに、見た目だけが硬くならない。このバランスが実にいい。

そして僕がこの素材に惹かれるのは、アウトドアジャケットに使われていながら、どこかコートを思わせる質感を持っているところだ。ナイロン特有の光沢を強く主張するのではなく、コットンの自然な風合いと微起毛による穏やかな表面感が、ジャケット全体の印象を整えている。機能的なデザインを持ちながら、いかにもスポーツウェアという見え方にならない。その理由のひとつが、この素材選びにある。

もちろん、見た目だけを優先した生地ではない。コットンにナイロンを組み合わせ、高密度に織り上げたうえで撥水加工を施し、水滴が表面に染み込みにくい仕様としている。高密度の織りは風を通しにくくする方向にも働く。アウトドアウェアに必要な実用性を持たせながら、街で着たときには生地そのものの表情まで楽しめる。冬のアウターにこの生地を選んだ意味は大きい。

比翼とポケットの再解釈

そして、このジャケットの面白さがはっきり表れているのが首元とポケットの構造だ。1980年代のパタゴニアのバギーズジャケットには、ジッパーを覆う比翼が襟元まで伸びず、首の下あたりで終わる独特な仕様が見られる。上部ではジッパーが露出し、下部では比翼に隠れる。一般的なアウトドアジャケットではあまり見かけない、少し変わった前立てだ。

A VONTADEは、この特徴をそのまま写していない。比翼を首元まで延長し、スタンドカラーへと変更している。襟を立てて前を閉じれば首元まで生地で覆うことができ、風の侵入を抑える方向に働く。元の構造を消して別物にしたのではなく、その特徴を理解したうえで、冬の中綿ジャケットとして必要な形へと考え直している。

しかも、この変更は機能だけで終わっていない。比翼が首元まで一本につながることで、前身頃に縦の線がすっと通る。ゆったりとした身頃と厚みのある中綿を持つジャケットでありながら、正面から見た輪郭が必要以上に散らからない。首元まで比翼を伸ばすというひとつの変更が、防風性と見た目の両方に効いている。こういう再解釈には、ちゃんと意味がある。

ポケットも同じだ。古いバギーズジャケットには、立体的で存在感のあるポケット構造が見られ、それ自体が前身頃の大きな特徴になっていた。A VONTADEでは、その複雑な構造をあえて簡潔に整理している。ポケットの主張を抑えることで前身頃の凹凸が減り、ゆったりとした身頃の形とコットンナイロンウェザーの質感が、より素直に見えてくる。

ただ簡単にしたわけでもない。両脇にはハンドウォーマーポケットを備え、寒いときには自然に手を入れられる。元の服が持っていた立体的なポケットの面白さを理解したうえで、冬の日常で必要な機能を残し、外観を整理する。比翼もポケットも、削った、足したという話だけではない。今着る一着として、どこをどう変えるべきか。その判断そのものが、このBAGGIES JACKETのデザインになっている。

厚みのあるシンサレート

そして、このジャケットを冬の一着として成立させているのが、中綿に採用されたシンサレートだ。3Mが開発したシンサレートは、微細な繊維の間に空気を保持することで、身体から発せられる熱を逃がしにくくする断熱素材。繊維そのものが発熱するのではなく、空気の動きを抑えることで保温性を確保する仕組みを持つ。

シンサレートというと、薄くても暖かい中綿という印象が強いかもしれない。しかし、シンサレートには薄さを重視したものだけでなく、嵩高性を持たせたタイプも存在する。このBAGGIES JACKETに使われているのは、しっかりと厚みのあるシンサレート。中綿の膨らみを極力消すのではなく、その量感まで生かしながら、冬のアウターとしての保温性を備えている。

この厚みが、バギーズジャケットの大らかな形と実によく合っている。もともと身体を締め付けない、ゆとりのあるデザインだからこそ、厚みのある中綿を取り込んでも形に無理がない。むしろ、もともとの身頃や袖が持つゆったりとした造形に、中綿の量感が加わることで、冬のアウターとしての存在感が生まれている。バギーズという名前にふさわしい大らかさを残したまま、冬の服へと仕上げているところが面白い。

そして、その量感を外側から支えているのが、高密度コットンナイロンウェザーだ。ハリとコシのある表地が中綿の膨らみを受け止めることで、身頃や袖に立体的な輪郭が生まれる。柔らかな中綿の膨らみと、それを包むしっかりとした生地。この組み合わせによって、単にボリュームがあるだけではない、形のはっきりとしたジャケットになっている。生地の選択と中綿の厚みが、保温性だけでなく、この服の造形そのものを決めているのだ。

都会の男が着るバギージャケット

僕がLAMPAでこのBAGGIES JACKETをセレクトしたのは、古いアウトドアウェアが持っていた自由な発想を、今の冬の服として見事に成立させているからだ。元のデザインを知れば、比翼やポケットの変更に込められた考えが見えてくる。そして実際に服を見れば、高密度ウェザーの質感とシンサレートの量感が、その大らかな造形をどれほど魅力的にしているかが分かる。古い服への理解が、単なる復刻でも懐古でも終わらず、新しい一着の格好良さにつながっている。そこにA VONTADEらしい服づくりの面白さを感じる。

80年代のアウトドアウェアが持っていた自由な造形を残しながら、今の冬の服として考え抜かれた一着です。元になった服を知っていれば、変更されたディテールの面白さまで深く楽しめます。しかし、歴史を知らなければ魅力が伝わらない服ではありません。コートを思わせる生地の表情、首元まで通った比翼の縦の線、厚みのあるシンサレートが生む立体的な輪郭。そのすべてが一着の服としてきちんと格好良くまとまっています。アウトドアの機能を備えながら、都会の男が自然に袖を通したくなる。LAMPAが紹介したい、冬のBAGGIES JACKETです。