2026/10/17 18:38














A VONTADE — ZIP WORK JACKET VTD-565-JK
これからVINTAGEになっていく服。
服を長く見続けていると、古い服を忠実に再現していることだけでは、あまり心が動かなくなってくる。もちろんVINTAGEは好きだし、その時代にしか生まれなかったディテールや生地には今でも惹かれる。けれど、今新品の服を買うなら、過去の服が持っていた魅力を理解した上で、今の時代に何を生み出せるのか。僕はそこに惹かれる。
A VONTADEのZIP WORK JACKETは、まさにそんな一着だ。デザインソースは1940年代のストア系ブランドに見られるジャケット。個人的にも大好物なジャンルだが、このジャケットに強く惹かれた理由は、40年代らしさをどこまで再現しているかではない。当時の服が持っていた格好良さを残しながら、今着る服としてどこまで作り直しているか。その仕事がとにかくいい。
深いブラックデニムにブラックのカウハイドレザー。WALDESのジッパーやフロントトップのタブ、ポケット、裾のディテールには古いワークジャケットの匂いを残しながら、着た時の輪郭は決して昔のままではない。古臭くない。それでいて、綺麗に整えすぎてもいない。LAMPAが考えるCITY RUGGEDという言葉が、これほど自然に当てはまるジャケットもなかなかない。
深い黒を、着ながら育てていく
使用しているのは11.5ozのブラックデニム。経糸には硫化染めした黒糸を使い、緯糸にも黒の綿糸を打ち込んでいる。経糸だけを黒くしたデニムとは違い、表から見える経糸だけでなく、その奥にある緯糸まで黒。そのため生地全体に白さが出にくく、非常に深い黒に仕上がっている。
ただし、その黒は均一で滑らかなものではない。スラブデニム特有の糸のムラが生地表面に凹凸とザラつきをつくり、漆黒でありながらワークウェアらしい粗さが残っている。モード系のブラックデニムに見られる滑らかで均整の取れた黒とは違い、どこかアメカジの匂いがする黒。深い色合いの中に、デニム本来の無骨さがしっかりと息づいている。
そして硫化染めだからこそ、着て、洗うことを繰り返せば、最初の深い黒は少しずつ褪せ、生地の凹凸や糸のムラも色の変化とともに違った表情を見せてくれるはずだ。新品の状態を維持することを目的とした生地ではなく、着用と洗濯の積み重ねがそのまま表情になっていくブラックデニム。最初は漆黒だったジャケットが、何年も経つうちにどんな黒へ変わっていくのか。その過程まで楽しみたい。
ブラックデニムとカウハイド、そしてWALDES
襟にはブラックのカウハイドレザーを使用している。しかも単に異素材を組み合わせたのではなく、スラブデニムの持つ粗い表情に馴染むよう、レザーにも加工を施している。ブラックデニムにブラックレザー。アメカジ好きにはたまらない組み合わせだが、ここで革だけが綺麗すぎると、ジャケット全体の印象がちぐはぐになってしまう。デニムとレザー、それぞれの質感をきちんと合わせているところにも、この一着の良さがある。さらに、襟のカウハイドにも着用を重ねることで皺や艶が生まれてくるだろう。デニムとは異なる素材だからこそ、同じ一着の中でそれぞれが違う時間の重ね方をしていくところも楽しみだ。
フロントジップにはWALDESを採用。1940年代から50年代当時のジッパーの規格や製法を踏まえて作られたパーツで、ここにもデザインソースとなった時代とのつながりがある。さらにフロントトップには、当時のアンロック式ジッパーを留めるために考案されたと思われるタブ使い。ポケットや裾にも、古いワークジャケットが持っていたディテールが残されている。単に古いパーツの見た目を借りるだけではなく、その時代の服がどんな仕組みで作られていたのかというところにまで目を向けているのが面白い。
40年代の空気を残し、シルエットは今へ
ここまでの説明だけなら、かなりVINTAGE色の強いジャケットを想像するかもしれない。ところが、着た時の印象はまったく違う。当時のストア系ジャケットに見られる直線的な輪郭をそのまま持ってくるのではなく、パターンを再構築し、全体に丸みを持たせている。身幅と着丈の関係も現代の服として整えられ、ワークジャケットらしい無骨さは残しながら、身体を包む輪郭にはどこか柔らかさがある。
さらに面白いのが袖付けだ。通常なら後半の工程となることが多い袖付けを先に行い、身頃と袖をつないだ状態から、肩から袖先までを一緒に巻き縫いで仕上げている。その工程によって、肩から袖先へとつながる綺麗なショルダーラインが生まれている。完成した時の見た目だけでは分からない縫製工程にまで手を入れ、着た時の輪郭を整えているところが実にいい。
A VONTADE ZIP WORK JACKET VTD-565-JK
古い服のディテールを知っているだけでは、このジャケットは作れない。特に僕が感心するのは、デニムの粗さに合わせてレザーの質感を調整し、40年代のディテールを残しながら、肩のラインをつくるために縫製の順序まで変えていることだ。ひとつひとつの仕様が独立しているのではなく、すべてが着た時の一着の姿につながっている。だからVINTAGEの匂いは濃いのに、着た姿は古臭くならない。こういうところまで考えて服を作っているからこそ、僕はA VONTADEを選び続けている。
今あるVINTAGEを手に入れるのもいいけれど、自分で着て、自分の時間でVINTAGEにしていく。何年も先、このブラックデニムとカウハイドがどんな顔になっているのか。その姿を見るまで、着続けてみたいと思えるジャケットです。
