2026/10/14 19:13














ORDINARY FITS — DENIM JACKET TYPE 2ND USED 013USD
やりすぎないUSED加工が、名作2NDに新しい魅力を与える。
Gジャンという服は、着丈が難しい。
昔、ヴィンテージのGジャンを買おうと思い、アルバイトで貯めた大金を持って店まで行ったことがある。ところが、いざ試着してみると、どうしてもあの着丈の短さが自分の中で消化できない。結局、買わずに帰った。それ以来、いわゆるGジャンという服が個人的にずっと苦手だった。
そんな僕が、ORDINARY FITSのデニムジャケットを試着して、すぐにピンときた。理由は着丈の長さ。これが実に上手い。
Gジャンは、ただ着丈を長くすれば着やすくなるというものではない。短すぎれば、インナーをパンツに入れる着方が前提になりやすい。しかし、長くしすぎれば、今度はGジャン特有の形が失われ、普通のデニムブルゾンになってしまう。
そもそもGジャンは、ファッションとして格好良く見せることを第一に考えて生まれた服ではない。作業着としての機能や動きやすさを求めた結果、あの独特の形になったものだ。現代の感覚からすると野暮ったく感じられる部分もある。しかし、その野暮ったさこそが、服の個性であり魅力になっていることも多い。
だからこそ、現代的に着やすくするために、すべてを整えてしまえば良いという話ではない。Gジャンでいえば、着丈の短さは短所であると同時に、失ってはいけない個性でもある。
着丈の加減に表れる、服作りのセンス
ORDINARY FITSが上手いのは、まさにその部分だ。ヴィンテージの2NDをモチーフにしながら、着丈をオリジナルより若干長めに設定。短丈特有の輪郭は残しつつ、裾を出したときにも極端に短く見えない形に仕上げている。
どこを変えて、どこを変えないのか。
この判断が本当に難しい。長くすれば簡単に着やすくなるわけではないし、昔の形をそのまま残せば良いというものでもない。わずかな違いで、服全体の印象が変わってしまう。僕は、こういうところにブランドのセンスが出ると思っている。
そして今回紹介するのは、そのDENIM JACKET TYPE 2NDにUSED加工を施したモデル。基本的なデザインはONE WASHモデルと共通だが、加工によってインディゴの色合いが変わり、ジャケット全体の見え方にも違いが生まれている。
ORDINARY FITSのUSED加工で好きなのは、やりすぎないところだ。
料理に例えるなら、濃いソースの味で食べさせるのではなく、素材本来の味を邪魔しない程度に味を加える感覚だ。もちろん、濃い味付けの料理には、その料理ならではの美味しさがある。ただ、今回のORDINARY FITSに関しては、素材の持ち味を残すために、あえて味付けを控えている。その加減がいい。
66後期の501を研究した、オリジナル14オンスデニム
今回のジャケットに使用されているのは、ORDINARY FITSがLEVIS 501の66後期モデルを研究して開発した、ブランドオリジナルの14オンスセルヴィッチデニム。
僕が面白いと思うのは、ヴィンテージデニムの中でも、あえて66後期という時代の生地に目を向けていることだ。
デニムの色落ちというと、太く不規則な縦筋が現れ、濃いインディゴと白く擦れた部分のコントラストが強く出るものを思い浮かべる人も多いだろう。1940年代の501XXなどに見られる、いわばゴソッと色が抜ける力強い表情だ。あの迫力には、やはり独特の魅力がある。
しかし、デニムの色落ちは時代によって変わってきた。糸の作り方や染色、生地の織り方が変化するにつれ、同じインディゴデニムでも、着込んだときに現れる表情は異なる。
一般に66後期と呼ばれる時代のデニムには、太く不規則な縦筋が強く浮かび上がるものとは違い、細かな点状の色抜けが現れやすい傾向がある。もちろん、同じ年代でも個体差はあり、縦落ちするものも存在する。年代だけで生地の表情を一律に決められるわけではない。ただ、1940年代のデニムに見られる荒々しい色落ちと比べると、もう少しあっさりとした青の見え方が特徴の一つといえる。
ここで大切なのは、あっさりしていることと、表情が乏しいことは違うという点だ。
66後期のデニムには、強い縦筋とは異なる、細かな濃淡の重なりにも面白さがある。近くで見れば糸や織り目に沿った小さな色の変化があり、少し離れて見ると、それらが一つのブルーの面として見えてくる。強いコントラストだけでは語れない、インディゴの色合いそのものに魅力がある。
デニムの縦落ちは、糸の太い部分と細い部分、表面に突出した部分と沈んだ部分で摩耗の仕方が異なることで生まれる。突出した部分のインディゴが先に擦れ、染色されていない内側の綿が現れる。一方、擦れにくい部分には青が残る。その差が縦方向に連続することで、独特の筋が生まれる。
一方で、着用によって生じるシワや、縫い目、生地の重なりに沿って現れるアタリは、糸そのものによる縦落ちとは別のものだ。デニムの色落ちは、こうした複数の要素が重なって生まれている。
ORDINARY FITSが今回の生地で研究したのは、まさに66後期のデニム。古いデニムの魅力を、強い縦落ちや荒々しい凹凸だけで捉えていない。
1940年代のデニムが持つ迫力とは違う、細かな濃淡による青の表情。そこに目を向けているところが、僕には面白い。
しかも、14オンスという重量を持たせている。数字だけを見れば、デニムとして特別に重いわけではない。しかし、同じ14オンスでも、糸の性質や織りの密度によって生地の質感は変わる。重量だけで判断するのではなく、糸が作る表面の細かな変化と、織り上がった生地のしっかりした質感を合わせて考えたい。
さらに、セルヴィッチデニムを採用している。セルヴィッチとは、生地の端で緯糸が折り返すことで形成される耳のこと。かつてのデニムに広く用いられていたシャトル織機による生地を特徴づける仕様の一つで、66後期の501も赤耳デニムが使われていた時代に位置する。
ただし、セルヴィッチであることと、強い縦落ちが生まれることは別の話だ。生地の耳の構造が、糸のムラや染色の状態まで決めるわけではない。重要なのは、どんな生地を作りたいのかという目的があり、それに合わせて糸や織り方、仕上げを選んでいることだ。
毛羽立ちとねじれを残す、デニムの整理加工
今回の14オンスデニムで、もう一つ注目したいのが整理加工に対する考え方だ。
一般にデニムの生地作りでは、織り上がった生地の表面を整えたり、洗濯後に生じる変形を抑えたりするため、さまざまな仕上げ加工が行われる。製品としての均一さや扱いやすさを考えれば、そうした加工には意味がある。しかしORDINARY FITSでは、古いデニムが持っていた性質を残すため、あえて毛焼きやスキュー加工を施していない。
毛焼きとは、生地表面の細かな毛羽を焼いて取り除く加工のこと。これを行えば表面は整い、すっきりとした見え方になる。一方、毛羽を残せば、綿の繊維が持つ細かな凹凸が表面に現れ、均一に仕上げられた生地とは違う粗さが生まれる。
毛羽立ちのあるデニムは、表面の細かな繊維によって、光の当たり方や見る距離で質感が変わって見える。USED加工によって色を落とした場合でも、こうした生地自体の性質が、単に均一に脱色しただけでは得られない質感につながる。
そしてスキュー加工。これは、デニムの綾織り構造や糸の撚りなどによって生じる斜行やねじれを、あらかじめ補正する加工のことだ。ORDINARY FITSでは、この補正も行わず、デニムが本来持っている性質を残している。
もちろん、ねじれが大きければ良いというものではない。実際にどの程度の変化が現れるかは、着用や洗濯の条件によっても異なる。大切なのは、古いデニムの性質を理解したうえで、どこまで手を加えるかを判断していることだ。
古いデニムの表情と、密度の高い織り
その一方で、今回の生地は打ち込み本数を多めに設定し、織りの密度を高めている。経糸と緯糸を密に織り込むことで、洗いを繰り返してもヘタりにくい、しっかりした生地に仕上げている。
ここが実に面白い。毛羽立ちやねじれといった古いデニムの不均一な性質は残しながら、織りの密度によって強さを持たせている。
古いものを忠実に再現するために、すべてを昔と同じにするのではない。残したい質感は残し、日常で着続けるために必要な部分には手を加える。
デニムの魅力というと、色落ちや表面の凹凸に目が向きやすい。しかし、もともと作業着として使われていた素材だからこそ、繰り返し着て、洗うことを前提とした丈夫さにも意味がある。
デニムは、新品の状態だけで完成する服ではない。着て、洗い、身体の動きによってシワが入り、少しずつ表面が変化していく。USED加工によってすでに色の濃淡が表現されていても、そこから実際に着ることで生地の表情は変わっていく。
最初から加工で完成したヴィンテージ感を見せるだけでなく、その後も着る人自身の時間が加わっていく。そう考えると、加工の加減を抑えていることにも意味がある。
岡山のデニム加工技術と、ORDINARY FITSの匙加減
岡山県児島をはじめとする日本のデニム産地では、USED加工の技術が磨かれ、海外からも高い評価を受けてきた。色を落とす位置や濃淡の強さによって、同じデニムでも仕上がりの印象は大きく変わる。
今回のORDINARY FITSは、インディゴの深い青を残しながら、部分的に淡い色落ちを加えた仕上がり。加工の技術を前面に押し出すのではなく、ジャケットそのものの形を見せている。
二つの胸ポケット、フロントのダブルアクションプリーツ、身幅と着丈のバランス。そうした2ND本来のデザインが、USED加工によって埋もれていない。むしろ、ポケットのフラップや前立て、プリーツの折り目に沿ったインディゴの濃淡が、前身頃の立体的な構造を引き立てている。
この匙加減が、僕は好きだ。
1STから2NDへ。二つの胸ポケットが変えたもの
今回のDENIM JACKET TYPE 2NDは、1950年代に登場したLEVISの通称2ND、507XXをデザインのモチーフとしている。
2NDを考えるうえで面白いのは、それ以前の1STから、どの部分が変わったのかということだ。
1STの大きな特徴は、左胸に一つだけ設けられたポケットと、背面中央のシンチバック。左右非対称の前身頃と、背中のバックルによる無骨な造形が、古いワークウェアならではの個性を作っていた。
それに対して2NDでは、胸ポケットが左右に二つ配置され、背面中央のシンチバックは裾の両脇に設けられたボタン式アジャスターへと変更された。単に収納が増え、調整方法が変わっただけではない。この二つの変更によって、ジャケット全体の見え方も大きく変わっている。
まず、左右に配された二つのパッチポケット。1STでは左胸のポケットが視線を集め、前身頃に左右非対称の面白さがあった。一方、2NDでは二つのポケットが胸元に並ぶことで、前面の重心が左右に分かれ、全体の輪郭が整って見える。
しかも、ポケットは単なる装飾ではない。収納という作業着本来の役割を持ちながら、その四角い形とフラップが胸元に存在感を与える。身幅のあるボックス型のシルエットと相まって、前身頃にどっしりとした力強さが生まれている。
そして、フロントには1STから受け継がれたダブルアクションプリーツを配置。これは、伸縮性の乏しいデニムに動くためのゆとりを持たせる、ワークウェアならではの構造だ。生地を折り畳んで前身頃に収めることで、必要な部分に余裕を持たせるという合理的な発想から生まれている。
左右に並ぶ二つの胸ポケットが前身頃に力強さを与え、前立ての両脇に設けられたアクションプリーツが、古いワークウェアならではの立体的な表情を生み出している。
さらに、プリーツの折り山やステッチの周辺は、生地が重なることで擦れ方にも差が出やすい。着込むことで、その構造に沿ったアタリが現れることもある。これは糸そのものによる縦落ちとは別の、服の形から生まれる色落ちだ。
今回のUSED加工では、そうした前身頃の立体的な構造に、インディゴの濃淡が加わっている。フラップや前立て、アクションプリーツの存在が、色の変化によっていっそう目に入りやすくなる。
シンチバックからサイドアジャスターへ
背面にはプリーツを配置し、裾の両脇にはボタン式のアジャスターを備えている。1STのシンチバックは背面中央にベルトと金具があり、後ろ姿にも強い主張があった。対して2NDでは、調整機構を左右の裾へ移すことで、背中の中央から金具がなくなり、後ろ姿がすっきりしている。
一方で、裾のアジャスターを調整すれば、身幅のゆとりを残しながら腰回りの収まりを変えることができる。短丈で身幅のあるジャケットだからこそ、裾のわずかな絞り方によって、着たときの輪郭にも違いが生まれる。
こうして見ると、2NDは1STの持っていたワークウェアとしての構造を受け継ぎながら、前後のデザインを少しずつ整理したモデルだということが分かる。左右の胸ポケットによって前面の構成が整い、裾のアジャスターによって背面中央の主張が抑えられる。しかし、ダブルアクションプリーツや身幅のあるボックス型、短い着丈といった、古いデニムジャケットの骨格はそのまま残っている。
だから2NDは、1STとはまた違う格好良さがある。無骨さは失っていない。それでいて、左右のポケットと背面の構成によって、服全体が一つの形として整っている。
1950年代のデザインに、1970年代後半のデニム
ヴィンテージのレプリカを作るのであれば、デザインと生地の年代を揃えるという考え方もあるだろう。しかし、ORDINARY FITSはそうしていない。1950年代の2NDの造形と、1970年代後半の66後期を研究したデニム。それぞれの時代から良いと思うものを選び、一着の服として組み合わせている。
これが僕には、実にORDINARY FITSらしく感じられる。
ヴィンテージのどの部分に価値を見出し、どの要素を今の服に取り入れるのか。そこに作り手の判断があり、服としての個性が生まれている。年代を揃えることが目的ではない。良いと思ったものを、自分たちの感性で組み合わせる。その自由さがあるから、ただのレプリカでは終わらない。
ORDINARY FITS DENIM JACKET TYPE 2ND USED
昔、アルバイトで貯めた大金を持って買いに行きながら、どうしても着丈が納得できず、買わずに帰ったGジャン。そんな僕が、今ではORDINARY FITSのGジャンを自分から着たいと思うようになりました。ヴィンテージの個性を残しながら、今の自分が本当に着たいと思える形に仕上げ、USED加工も必要以上に主張させていません。どこを残し、どこに手を加え、どこで止めるのか。その一つひとつの判断に、LAMPAがORDINARY FITSを選ぶ理由があります。
