2026/10/14 11:45













ORDINARY FITS — DENIM JACKET TYPE 1ST ONE WASH 011OW
Gジャン本来の無骨さを残しながら、今の感覚で着る。
実は昔、VINTAGEのGジャンを買おうと思い、アルバイトで貯めた大金を持って店まで行ったことがある。ところが、いざ試着してみると、どうしてもあの着丈の短さが自分の中で消化できない。結局、買わずに帰った。それ以来、いわゆるGジャンという服が個人的にずっと苦手だった。
そんな自分が、ORDINARY FITSのデニムジャケットを試着して、すぐにピンときた。
理由は着丈の長さ。これが実に上手い。
Gジャンの着丈というのは、実はかなり難しい。短すぎると、インナーをパンツに入れる着方が前提になりやすい。かといって、ただ長くすれば良いわけでもない。長すぎれば、今度はGジャン特有の形が崩れ、普通のデニムブルゾンになってしまう。
そもそもGジャンは、ファッションとして格好良く見せることを第一に考えて生まれた服ではない。作業着としての機能や動きやすさを求めた結果、あの独特の形になったものだ。
そして、ここが実に面白いところなのだが、ワークウェアやミリタリーウェアには、現代のファッションという視点から見れば、野暮ったく感じられる部分が少なからずある。しかし、その野暮ったさこそが、服の個性であり魅力になっていることも多い。機能を優先して作られた服を、本来とは違う目的でファッションとして着る。そこには、最初からファッションのためにデザインされた服とは違う面白さがある。
だからこそ、着やすくするためにすべてを整えてしまえば良いという話ではない。無骨な部分を削り、現代的なシルエットに近づけすぎれば、今度はその服である意味が薄れてしまう。Gジャンでいえば、着丈の短さは短所であると同時に、GジャンをGジャンたらしめている大切な個性でもある。
短丈という個性を残す、その加減
ORDINARY FITSが上手いのは、まさにその部分だ。オリジナルより着丈を若干長めに設定しながら、Gジャン特有の短丈の輪郭は失っていない。着やすさを考えて手を加えているのに、ワークウェアとして生まれた服の無骨さがきちんと残っている。
どこを変えて、どこを変えないのか。
この判断が本当に難しい。LAMPAでは、そうした服作りにこそ、ブランドのセンスが表れると考えている。
岡山県児島を拠点とし、デニムを得意とするORDINARY FITS。今回のDENIM JACKET TYPE 1STには、古い服の魅力を理解したうえで、今の時代に着るための工夫が表れている。そして、その考え方は着丈だけでなく、生地作りにも通じている。
1947年頃の501XXを研究した、オリジナルの14オンスデニム
今回のジャケットに使用されているのは、ORDINARY FITSが1947年頃の501XXを研究して開発した、オリジナルの14オンスセルビッチデニム。素材はコットン100%だ。
ヴィンテージデニムを語るうえで、1947年頃の501XXは外すことのできない存在だ。第二次世界大戦が終わり、物資統制によって簡略化されていた仕様が再び整えられた時代。デニムの歴史においても重要な転換期であり、この頃の501XXは、後のジーンズへとつながる一つの完成形として知られている。
そして、この時代のデニムが今なお高く評価される理由の一つが、生地そのものの表情にある。
当時のデニムを理解するうえで重要なのは、糸の太さに生じる自然なムラ、インディゴの染まり方、そして経糸と緯糸が織り重なる際の張力や密度だ。
インディゴ染色された経糸は、表面に色が集中し、中心部分には白い芯が残る。着用による摩擦で表面のインディゴが少しずつ削られると、その内側の白が現れる。さらに糸の太い部分と細い部分では摩耗の仕方が異なるため、生地の表面に不規則な濃淡が生まれていく。
いわゆる縦落ちと呼ばれる表情も、こうした糸と染色の性質が重なって生まれるもの。単に青が薄くなるのではなく、白く擦れた部分、その周囲に残る淡い青、さらに濃いインディゴが細かく入り交じることで、生地に奥行きが生まれる。
また、1940年代のデニムと1950年代、60年代のデニムでは、糸の性質や生地の設計、色落ちの傾向にも違いが見られる。ただし、年代によって生地が一斉に切り替わったわけではなく、同じ年代でも個体差がある。だからこそ、単純に古いほど良い、縦落ちが強いほど良いという話ではない。
大切なのは、糸の凹凸や色の残り方が、着込んだときにどんな表情を作るのかということ。デニムを長く見続けていると、派手な色落ち以上に、何気ない部分に残る細かな濃淡に惹かれることがある。
古いデニムの表情を、糸の段階から考える
ORDINARY FITSが今回の生地で取り組んだのも、そうした古いデニムの質感を、糸の段階から考えることだった。数種類の糸を組み合わせることで、経糸に長いムラ感を持たせ、ヴィンテージデニム特有の不均一な表情を再現している。
ここで重要なのは、単に糸を不均一にすれば良いわけではないということだ。太い部分と細い部分が不自然に繰り返されれば、いかにも加工して作ったムラに見えてしまう。長いムラを持つ糸を組み合わせることで、生地全体に均一ではない濃淡や凹凸を生み出す。その自然さを追求するところに、ヴィンテージデニムを研究する意味がある。
14オンスという重量も、この生地を考えるうえで大切な要素だ。数字だけを見れば、デニムとして特別に重いわけではない。しかし、生地の良し悪しはオンスだけでは決まらない。同じ14オンスでも、糸の性質や織りの密度によって、手にしたときの質感も、着用したときの輪郭も変わってくる。
今回の生地で評価したいのは、1947年頃のデニムを研究しながら、当時の見た目だけを追いかけていないところだ。糸のムラによる表面の凹凸を残しつつ、ジャケットとして着たときに生地がどう見えるかまで考える。14オンスという数字の向こうに、糸と織りの組み合わせを選ぶ作り手の判断がある。
古い織機を使うだけでは、古いデニムにはならない
ヴィンテージデニムを考えるうえでもう一つ知っておきたいのが、当時の生地を現在の技術で再現することの難しさだ。
1940年代のデニムは、シャトルと呼ばれる杼を左右に往復させながら緯糸を織り込む、旧式のシャトル織機によって生産されていた。生地の両端で緯糸が折り返すことで形成されるセルビッチは、こうした製法を象徴するものでもある。現在主流となっている高速織機と比べると、旧式のシャトル織機は生地幅が狭く、生産速度も遅い。機械の調整や維持管理にも多くの手間が必要となる。
しかし、古い織機を使えば、それだけで1940年代の生地が出来上がるわけではない。
原綿の選定から紡績、糸の撚り、インディゴの染色、織る際の張力、緯糸の打ち込み、そして仕上げ加工まで。その一つひとつが生地の硬さや凹凸、洗濯後の収縮、さらには色落ちにまで影響する。
同じ太さの糸を使い、同じ重量のデニムを織ったとしても、糸の張り具合や打ち込み方が違えば、生地の質感は変わってしまう。糸のムラを強くすればヴィンテージらしく見えるとも限らない。むしろ、その不均一さをどこまで自然に表現するかが難しい。
さらに、現在残っているヴィンテージの多くは、長年の着用や洗濯によって変化した状態にある。そこから新品当時の糸や織りの状態を読み解き、再び生地として形にするには、相応の知識と技術が求められる。
現在も日本をはじめ各地で旧式シャトル織機によるデニム生産は続けられているが、設備を維持するだけでなく、紡績や染色などの工程を支える生産体制も必要になる。技術的に一度再現できたとしても、それを安定して作り続けることはまた別の難しさがある。
かつては日常の作業着を作るための生地だったものを、今ではその時代特有の質感を求めて、手間と時間をかけて作り直している。
当時のデニムを研究するということは、完成した色落ちを真似るだけではなく、その表情が生まれるまでの工程を一つずつ読み解くことでもある。何十年も前の生地に、現在の作り手がこれほどの労力を注いでいる。その事実だけでも、デニムという素材の奥深さが伝わってくる。
織りの密度と、あえて残したデニム本来の性質
今回のORDINARY FITSでは、打ち込み本数を多めに設定して生地の密度を高め、洗いを繰り返してもヘタりにくいタフさを持たせている。
デニムの魅力というと、どうしても色落ちや表面の凹凸に目が向きやすい。しかし、もともと作業着として使われていた素材だからこそ、繰り返し着て、洗うことを前提とした丈夫さにも大きな意味がある。糸に自然なムラを持たせながら、織りの密度によって生地としてのしっかりした質感を確保する。ここに今回の生地作りの面白さがある。
さらに、このデニムでは毛焼き加工を施していない。毛焼きとは、生地の表面に出た細かな毛羽を焼いて取り除き、表面を整える加工のこと。これを行わないことで、糸が持つ毛羽立ちをあえて残している。
表面をきれいに整えたデニムとは違い、毛羽が残ることで生地に少し粗さのある質感が生まれる。新品の段階から、均一に整えられた工業製品とは異なる、昔の作業着を思わせる表情を楽しめる。
もう一つ興味深いのが、スキュー加工を施していないことだ。スキュー加工とは、デニムの洗濯などによって生じる斜行やねじれを、あらかじめ補正するための加工。現在では、製品の形を安定させるために用いられることがある。
デニムは綾織りの構造や糸の撚りなどの影響によって、洗濯後に生地が斜行する性質を持つ。スキュー加工を施さないということは、その性質をあらかじめ補正せずに残しているということだ。実際にどの程度の変化が現れるかは着用や洗濯の条件によって異なるが、古いデニムに見られる特徴の一つを、現代の加工で消していない点は興味深い。
もちろん、斜行が生じること自体が優れた生地の証明になるわけではない。ただ、かつてのワークウェアが持っていた不均一さを、現代の技術ですべて消してしまわない。
糸のムラを作り込み、毛羽立ちを残し、斜行を補正しない。一方で、打ち込み本数を増やすことで、洗いを繰り返してもヘタりにくい強さを持たせている。古いデニムの表情を求めながら、現在の作り手が必要だと考える部分には、しっかりと手を加える。その積み重ねによって、この14オンスデニムが生まれている。
ワークウェアの個性を残した、TYPE 1STのデザイン
今回のDENIM JACKET TYPE 1STは、1940年代のLEVISの通称1stをデザインのモチーフとしている。
フロントに設けられた左右のアクションプリーツは、身体の動きに対応するための構造。生地を折り畳んで前身頃に収めることで、必要なときにゆとりを生み出すという、ワークウェアならではの合理的な発想から生まれている。現在ではその縦のラインが前身頃に立体感を与え、1stを象徴するデザインにもなっている。
左胸だけに配されたフラップポケットも、このモデルならではの特徴。左右対称ではない配置によって、中央の前立てやアクションプリーツとの間に独特の表情が生まれる。装飾を増やさなくても、前身頃にしっかりとした力強さがある。
背面にはプリーツとシンチバックを配置。シンチバックは本来、腰回りのフィットを調整するためのものだが、背中に金属パーツとベルトが加わることで、後ろ姿にもワークウェアらしい無骨さが残る。フロントの縦のラインに対し、背面ではシンチバックが横方向のアクセントとなり、前後で異なる表情を見せてくれる。
ORDINARY FITSでは、このシンチバックに針のないタイプを採用している。ヴィンテージの針付きシンチバックは、金属の針が露出する構造のため、車のシートなどに引っ掛かって傷を付けてしまうことがある。
針なしにすることで、1st特有の後ろ姿を残しながら、車のシートなどを傷つける心配にも配慮している。古いディテールをただ再現するのではなく、実際に着る人の生活まで考えて手を加えているところがいい。
そして、着丈の調整によって、裾を出したときにも身頃が極端に短く見えず、腰回りに自然な収まりが生まれる。一方で、フロントのプリーツやシンチバックが持つワークウェア特有の造形は、しっかりと主張している。
僕が最初に試着してピンときたのは、この全体のバランスだった。昔のGジャンに感じていた苦手な部分が解消されているのに、目の前にあるのは、紛れもなくGジャンなのだ。
ORDINARY FITS DENIM JACKET TYPE 1ST ONE WASH 011OW
今回のモデルはONE WASH仕様。インディゴの深い色合いを残しながら、一度洗いをかけた状態で仕上げられている。毛羽を残した生地の質感や、14オンスのデニムが作るしっかりとした輪郭を、新品の段階から楽しめる仕上がりだ。
着用と洗濯を重ねれば、インディゴの色合いや生地の表面にも少しずつ変化が現れる。毛羽立ちが落ち着いていく部分もあれば、身体の動きに沿って擦れが生まれる部分もある。そうした変化が一様ではないところも、デニムを着続ける楽しさの一つだ。
ヴィンテージの1stを知っている人なら、オリジナルとの細かな違いに作り手の考えを感じられる。そして、そうした歴史を知らなくても、着たときの形そのものに魅力がある。古い服の特徴を残しているからといって、着る人にヴィンテージの知識を求めるわけではない。
あれほど苦手だったGジャンを、今では自分の店で紹介しています。
短い着丈にも、ワークウェアとして生まれた服ならではの魅力があります。その魅力を失わずに、僕自身が着たいと思える形に仕上げてくれたことが、何より嬉しいのです。
かつては買わずに帰ったGジャンを、今では自信を持ってお客様に紹介できます。ORDINARY FITSが、この服に対する僕の考え方を変えてくれました。
