2026/10/11 01:48



LAMPA CITY STANDARD
~東京カジュアルの正統派~
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MODMNT — MIL SMOCK SHORT

ROYAL NAVY SMOCKを、今の服として再構築する。
被りだからこそ出来るデザインを、ここまで格好良く仕上げた一着。

アウターは、前開きの方が便利だ。着脱もしやすいし、体温の調整だって簡単にできる。

それでもLAMPAでは昔から、被って着るアウターに惹かれる。フロントにジップもボタンもない。だからこそ生まれる独特の形があり、多少の不便さがあっても、それを選びたくなるだけの格好良さがある。

MODMNT、鈴木大器氏のMIL SMOCK SHORTは、まさにそんな一着だ。

デザインのベースとなったのは、英海軍ROYAL NAVYのVENTILE SMOCK。雨風を受ける艦上で、ほかの衣服の上からガバッと被って着るためにつくられた、ゆとりのあるプルオーバーだ。

MODMNTは、その独特な量感とプルオーバーの構造を残しながら、着丈やポケットの配置を大胆に変更。さらに別のROYAL NAVYウェアからディテールを取り込み、素材まで現代のものへ置き換えている。

ROYAL NAVY SMOCKをデザインソースにした服は、これまでにもいくつも見てきた。忠実に再現したものもあれば、ファッションとして大きくアレンジしたものもある。

でも、このMIL SMOCK SHORTは、そのどちらとも違う。元の服が持つ特徴を残すだけではなく、その特徴があるからこそ出来る新しいデザインへ進めている。

これはかなり好きだ。

プルオーバーだからこそ出来る、ポケットの配置

まず目を引くのが、フロントを中心に配置された大小さまざまなポケット。

これだけポケットを付ければ、普通ならかなりうるさくなる。でも、不思議とそうならない。むしろ、それぞれのポケットの形と配置がつながり、身頃全体でひとつのデザインをつくっている。

ここが上手い。

一般的な前開きのアウターなら、フロント中央にはジップやボタンが走る。当然、左右に分かれた身頃の中でデザインを考えることになる。

しかしプルオーバーには、その制約がない。

フロント全体をひと続きの大きな面として考えられるから、中央をまたぐ位置にもポケットを置ける。大きさも形も変えながら、それぞれをひとつの面の中で組み合わせられる。

MODMNTは、その構造を思い切り生かしている。単に収納力を求めてポケットの数を増やしたのではない。ポケットそのものを服の造形として使っているのだ。

さらに、元のROYAL NAVY SMOCKが持つゆったりとした身幅を残しながら、着丈は少し短くアレンジ。

横方向の量感に対して縦方向を抑えることで、ゆとりのある身頃が必要以上に長く見えない。大きなポケットをいくつも配置しながら全体の輪郭が間延びしないのも、この着丈が効いている。

被りのアウターというと、アノラックをはじめアウトドア由来のものも多い。

でも、これはしっかりミリタリー。なのに、洗練されている。

軍用衣料らしい無骨さを消すことなく、ポケットの大きさ、配置、着丈、身頃の量感を整理し、ひとつの服として成立させている。

これだけ要素を盛り込んでも破綻しない。むしろ要素が多いからこそ、この服にしかない格好良さが生まれている。

機能から生まれたディテールを、デザインへ

フード後方には、同じくROYAL NAVYのFOUL WEATHER JACKETを思わせるクロス状のアジャスターを配置。

本来はフード着用時のフィット感を調整するための機能的なディテールだが、そのクロスしたテープ自体が後ろ姿に強い表情をつくっている。

最初から格好良く見せるためにつくられた装飾ではない。必要な機能を追いかけた結果として生まれた形だ。

それが何十年も経った今、デザインとして見ても格好いい。

僕はこういうディテールに弱い。

さらに面白いのが、背面に設けられたジップ。

プルオーバーの弱点は、どうしても着脱がしづらいことにある。だからといって前開きにしてしまえば、この服の最大の特徴であるフロントの大きな面が失われる。

ならば、後ろを開ける。

フロントのデザインには手を付けず、プルオーバーの着脱のしづらさには背面から手を入れる。

ここにも、この服の考え方がよく表れている。

見た目を優先して不便さをそのままにするわけでもない。便利さを優先して、プルオーバーを前開きに変えてしまうわけでもない。

被りだからこそ出来るデザインを守りながら、その弱点を別の構造で補う。

この発想が面白い。

VENTILEが担った役割を、現代の3レイヤー素材へ

そして、このMIL SMOCK SHORTを語る上で外せないのが素材だ。

使用しているのは、防水性と透湿性を兼ね備えた3レイヤー素材。耐水圧11,000mm、透湿度8,500g/㎡/24hrレベルの性能を備えている。

耐水圧11,000mmは、一般的に大雨への対応を考える際にも目安とされる10,000mmを超える数値。さらに透湿度8,500g/㎡/24hrという性能によって、衣服内に生じる湿気を外へ逃がすことまで考えられている。

表側の生地と裏側の生地、その間に防水透湿膜を挟み込んだ3層構造。外からの雨の浸入を防ぎながら、身体から発生する水蒸気を外へ逃がす。

そして僕がこの素材選びを面白いと思った理由は、単に高機能だからではない。

デザインソースとなったROYAL NAVYのVENTILE SMOCKもまた、当時の素材と技術によって雨風から身体を守るためにつくられた服だったからだ。

VENTILEは、高密度に織り上げたコットン生地。水分を含んだ綿繊維が膨らむことで糸と糸の隙間を狭め、水の浸入を抑える仕組みを持つ。

対して今回の3レイヤー素材は、防水透湿膜によって水の浸入を防ぎながら、水蒸気を外へ逃がす構造。

素材も違えば、仕組みも違う。

けれど、雨風から身体を守るという役割はつながっている。

ここが重要だと思う。

古いミリタリーウェアを再現するなら、当時と同じ素材を選ぶ方法もある。それには当然、それだけの価値がある。

MODMNTがこの服でやっているのは、それとは違う。

VENTILEという名前や見た目をなぞるのではなく、なぜROYAL NAVYがその素材を必要としたのかを見る。そして当時VENTILEが担っていた役割を、現代の3レイヤー素材へ置き換える。

昔の服の形に、現代の高機能素材を載せただけではない。

元の服がなぜその形で、なぜその素材だったのか。そこを理解した上で、今ならどうつくるかを考えている。

だから、ポケットも、着丈も、背面のジップも、3レイヤー素材も、すべてが同じ方向を向いている。

ROYAL NAVY SMOCKを再現することではなく、ROYAL NAVY SMOCKから何を生み出せるか。

僕がこのMIL SMOCK SHORTをセレクトした理由は、そこにある。

軍用衣料が持つ無骨さも、プルオーバー特有の格好良さも残しながら、今まで見たことのない一着に仕上げています。

元になった服の歴史や構造を知ればさらに面白く、知らなくても純粋に格好いいと思える一着です。

長く服を見てきても、こういう解釈に出会うとやはり嬉しくなります。

鈴木大器氏は、本当に上手いなと思います。