2026/10/04 17:52







YONETOMI RIGID CASHMERE SWEATER CREW NECK PULLOVER
高級素材をアメカジの時間軸へ持ち込んだ、YONETOMI渾身のニット。
カシミアと聞いて、まず思い浮かべるのは極上の柔らかさと滑らかさだと思う。身体を優しく包む着心地と、高級素材ならではの整った見え方。それがカシミアの大きな魅力であることに間違いはない。
ところがYONETOMIは、そのカシミアを繊維が切れる限界まで強く撚り、さらに度詰めで編んだ。
最初から柔らかく完成させるのではなく、しっかりとハリとコシを残した状態から着始め、洗いながら少しずつ柔らかくしていく。言ってしまえば、リジッドデニムを穿き込む感覚をカシミアでやろうとしている。
服を長く見続けていると、素材の良さを素直に引き出した服には何度も出会う。でも、素材が本来持っている魅力を理解したうえで、あえて反対方向へ振り切る服にはなかなか出会わない。
本来は柔らかさを求めるカシミアを、限界まで強くする。それでも触れれば、肌触りはしっかりカシミア。この相反する感覚が同時に存在している。
これは本当に凄い。
LAMPAがこのニットを選んだのは、単に上質なカシミアを使っているからではない。誰もが知っている高級素材に、まだこんな見せ方があったのかと思わせてくれたからだ。
柔らかさを求めず、強さを与えたカシミア
使われているのは、この生地のために別注で制作された強撚のカシミア糸。
繊維が切れる限界まで強く撚ったカシミアを、さらに度詰めで編み上げている。通常のカシミアニットと比べて二倍近い量のカシミアを使用しながら、ふわふわとした柔らかさへ向かうのではなく、密度があり、芯を感じるしっかりとした生地に仕上げている。
ここが、このニットの面白さの中心だと思う。
一般的なカシミアニットが繊維の柔らかさや膨らみを引き出す方向へ向かうのに対して、RIGID CASHMEREは強撚と度詰めによってハリとコシを与える。それによって新品の状態では、身体に柔らかく沿うカシミアとは明らかに違う、生地そのものに芯を感じる手触りが生まれている。
しかし、その芯の強さの奥にはカシミア特有の滑らかさがきちんと残っている。
しっかりしているのに、触れるとカシミア。この感覚が面白い。
カシミアの良さを消して別の素材に近づけたわけではない。カシミアの中にある別の魅力を、糸と編み方によって引き出している。そのために通常の二倍近い量の原料を使うという贅沢さまで含め、YONETOMIだからこそ形にできた生地だと思う。
無染色、未加工が生むDeadstockの空気
さらに、あえて洗いや染めといった製品加工を施さず、カシミア本来の色をそのまま生かしている。
高級素材だから美しく染め、整えて見せるのではなく、加工を加えず素材の色を残す。その仕上がりは、ミリタリーのDeadstockセーターを彷彿とさせる。
通常の二倍近い量のカシミアを使った贅沢な編地でありながら、見せたいのはラグジュアリーな華やかさではない。強撚と度詰めによるハリ、無染色の色合い、製品加工を施していない状態。それらが一つにつながることで、カシミアでありながら古いミリタリーウェアにも通じる素朴で力強い表情をつくっている。
高級素材を使いながら、高級品らしく見せる方向へ持っていかない。素材の価値を落とすのではなく、見せ方を変えることで別の価値を引き出している。この発想に、RIGID CASHMEREというニットの面白さがある。
新品を完成形にしない。カシミアを育てて着る
そして、このニットの価値は新品の状態だけでは分からない。
家庭で手洗いすることができ、洗濯を重ねることで、最初に感じるハリやコシが徐々に柔らかくなり、カシミア本来の風合いが増していく。
最初から最高の柔らかさに仕上げて渡すのではない。着て、洗って、その人の時間を重ねることで変わっていく余地を残している。
この付き合い方は、リジッドデニムに近い。
硬さの残る新品から穿き始め、何度も身体を通し、洗い、少しずつ馴染ませていく。買った瞬間が完成ではなく、その先に自分だけの状態が待っている。デニムを長く穿いてきた人なら、その時間まで含めて服を買う感覚を知っていると思う。
それをカシミアで味わえる。
高級なカシミアだから丁寧にしまっておくのではなく、自分で手洗いしながら着込んでいく。最初にあった芯の強さが徐々にほどけ、その中から本来の柔らかさが現れてくる。
「RIGID CASHMERE」という名前は、生地の硬さだけを表しているのではない。リジッドの状態から自分で育てていく、このニットとの付き合い方まで含めた名前だと思う。
スウェットの感覚へ落とし込んだカシミア
デザインも、この生地の考え方ときれいにつながっている。
腕や身幅にはややゆとりを持たせ、一般的なセーターとは違う、スウェットを思わせるシルエットを採用している。
度詰めされた生地のハリとコシが、このゆとりのある輪郭を支える。柔らかなニットが身体に沿って落ちる見え方とは違い、しっかりとした編地とカジュアルなシルエットが組み合わさることで、カシミアでありながらアメカジの延長線上にある輪郭をつくっている。
さらに首元には、通常なら付けられるブランドネームさえない。
カシミアの肌触りを損なわないためであり、同時にミリタリーのDeadstockセーターを思わせる見え方を深めるためでもある。
ブランドを主張するパーツを加えるのではなく、着心地と服としての完成度を優先して、あえてなくす。強撚、度詰め、無染色、製品加工を施さない仕上げ、スウェットを思わせるシルエット、そしてネームを排除した首元まで、すべてが同じ方向を向いている。
高級素材を、アメカジの時間軸へ
カシミアの価値を、柔らかさや高級感だけで考えていたら、このニットは生まれなかったと思う。極上の素材にあえて強さを与え、ミリタリーのDeadstockセーターを思わせる姿にして、スウェットの感覚へ落とし込む。そして新品を完成形とせず、自分で手洗いしながら柔らかく育てていく。
考え方は、驚くほどアメカジだ。
デニムや古いミリタリーウェアを着続ける中で感じてきた、時間を重ねるほど自分の服になっていく面白さ。僕がこのニットに強く惹かれたのは、その感覚をカシミアという高級素材で味わわせてくれるところにある。
柔らかくて滑らかなカシミアなら、ほかにも選択肢はある。でも、カシミアをここまでアメカジの文脈で捉え、強撚と度詰めでリジッドな状態をつくり、着て、洗って、育てる時間まで一着の価値にしたニットはそうそうない。
本当にアメカジが好きな人にこそ着ていただきたい一着です。誰もが知っているカシミアという素材に、まだ見たことのない価値を与え、買った瞬間ではなく、その先の時間まで楽しませてくれる。YONETOMIの技術と発想があったからこそ生まれた、唯一無二の最高傑作ニットです。
