2026/09/13 17:05










ORDINARY FITS — EMBROIDERY INLAY CS044
リメイクの偶然性を、今着たい一着へ。
センスの良い古着屋に行くと、ごく稀にものすごく格好良いリメイクスウェットに出会うことがある。
古着屋が売るために手を加えたものではない。当時の誰かが、自分で着るために袖を切ったり、刺繍を入れたり、自分の感覚だけを頼りに手を加えたもの。売れるかどうかなんて関係ない。単純に「自分はこう着たい」。そんな初期衝動から生まれたリメイクの中には、プロが計算して作った服とは違う、とんでもない格好良さを持ったものがある。
僕自身、昔からそういう古着に出会った時の、理屈では説明しきれない格好良さが好きだ。このORDINARY FITS EMBROIDERY INLAY CS044を見た瞬間に感じたのも、まさにあの雰囲気だった。
誰かが自分のために手を加えた、あの空気
ベースになっているのは、VINTAGEスウェットを思わせるゆったりとしたシルエット。そこへ首元には職人の手作業による、センスの良い配色の刺繍。そして袖は、あえてのカットオフ。
新品なのに、当時の誰かが自分のために手を加えたような空気がある。最初から完成されたデザインとして綺麗にまとめるのではなく、「ここに刺繍を入れたい」「袖は切った方が格好良い」。そんな感覚から生まれたリメイク古着の初期衝動を感じる。
手刺繍もカットオフも、単体で見ればかなりラフなディテール。それを単なる装飾として付けるのではなく、一着全体からあのリメイク古着の空気を感じさせるところが面白い。
スウェットほど厚くなく、ロンTほど薄くないインレイ生地
そして、この服の面白さは見た目だけではない。使用しているのは、コットン100%のインレイ生地。一見するとスウェットに見えるが、触ってみると少し違う。
スウェットほど厚くなく、ロンTほど薄くない。それでいてペラッとせず、適度なハリとコシがある。この独特な肉感を作っているのが、インレイという編み方。
通常の天竺が糸のループによって編地を作るのに対し、インレイはベースとなる編地に別の糸を横方向へ這わせるように挿入する構造。この糸が横方向への伸びを抑えることで、ニットでありながら生地にハリと安定感が生まれる。
面白いのは、単純に生地を厚くして、しっかりさせているわけではないところ。一般的な裏毛のように膨らみで肉感を出すのではなく、厚みを抑えながらコシを作る。
だからスウェットのようなしっかりとした安心感がありながら、必要以上にモコモコしない。逆にロンTのように身体へ落ち過ぎることもない。まさに、Tシャツ以上、スウェット未満。この肉感が本当に丁度良い。
ゆったりとしたシルエットを支える生地のハリ
そして、このインレイ生地だからこそ、ゆったりとしたシルエットにも意味が出る。
適度なハリによって身幅のゆとりがそのまま輪郭として残り、VINTAGEスウェットを思わせるボリュームがありながら、厚手のスウェットほど重たく見えない。
ここまで見ていくと、なぜこの服にインレイを使ったのかがよく分かる。デザインだけではなく、生地まで含めて一着のバランスを作っている。
ラフな要素を入れながら、今の服として成立させる
手刺繍。カットオフ。VINTAGEスウェットを思わせるボリューム。これだけラフな要素を入れれば、もっと土臭くなってもおかしくない。
でもORDINARY FITSが作ると、ちゃんと今の服として見える。インレイ生地のフラットな表情とシルエットで全体を整えて、どこか洗練されたところで止める。
古着をそのまま再現するんじゃない。古着が持っている偶然性や初期衝動を感じさせながら、生地選びとシルエットはきちんと考えられている。だから、単なる古着風の服では終わらない。
リメイクの初期衝動を、新品の服へ
古着に求めてきた、誰かの感覚がそのまま服になったような格好良さ。それを表面だけ真似るのではなく、インレイという生地まで含めて、今着たい新品の服として成立させている。
古着の面白さは、デザインや縫製だけではありません。時に、誰かが自分のためだけに手を加えた、その初期衝動そのものに強烈な格好良さがあります。その感覚を新品の服へ落とし込んだEMBROIDERY INLAY CS044。こういう服を作ってくるところが、やっぱりORDINARY FITSです。
