2026/08/11 23:50












MEANSWHILE — AMPHIBIOUS BOARD SHORTS MW-PT26109
必要な機能だけを、日常のショーツに収める。
機能服というものは、機能が増えるほど、その存在を見た目から強く主張しがちだ。ファスナーやメッシュ、ドローコードといった実用的なディテールも、それ自体がデザインとして前へ出れば、どうしてもアウトドアウェアやスポーツウェアの印象が強くなる。
MEANSWHILEの面白さは、その逆にある。機能はしっかり持たせる。それでも、それを必要以上に見せない。機能が服の前へ出るのではなく、あくまで一着の中へ収まっている。この考え方は、AMPHIBIOUS BOARD SHORTSを見るとよく分かる。
水陸両用のボードショーツをイメージした一本でありながら、最初に目へ入ってくるのは、水辺のための特殊なギアという姿ではない。日常で穿くショーツとしての見え方を崩さず、その内側に水辺での着用まで想定した機能が組み込まれている。
機能のためにデザインを犠牲にするのでもなければ、機能そのものをデザインとして強調するのでもない。きちんと理由のある設計を積み重ねながら、穿いた時には一つのショーツとして自然に見える。LAMPAでは、そこにこの一本を選ぶ理由を感じている。
火山砂から生まれた37.5 Technology
まず、このショーツを語るうえで外せないのが生地だ。採用されているのは、アメリカのCocona社が開発した37.5 Technology。火山砂由来の活性微粒子を繊維へ組み込み、身体から発生する水蒸気を素早く取り込みながら、赤外線エネルギーを利用して蒸発を促進する仕組みを持つ。
特徴的なのは、この機能が生地表面へ施された後加工ではないこと。活性微粒子そのものが素材へ組み込まれているため、洗濯を繰り返しても効果が失われない。汗や湿気が避けられない状況まで想定したショーツだからこそ、一時的な加工ではなく、生地そのものが機能を担っていることに意味がある。
さらに面白いのが、その発想の原点だ。開発のヒントになったと言われているのは、日本の阿蘇山周辺にある砂風呂。砂の中で身体が心地良く保たれる仕組みに着目し、火山砂由来の活性粒子を繊維へ応用したという。最先端の機能素材でありながら、その出発点は自然の働きにある。
ただ新しい機能を足すのではなく、自然界に存在する働きへ目を向け、それを繊維へ落とし込む。37.5 Technologyの成り立ちまで知ると、単に高機能素材を採用したという一言では終わらない面白さが見えてくる。
冷たさをつくる素材ではない
37.5 Technologyは、接触冷感素材のように着た瞬間の冷たさを狙ったものではない。暑い時には身体から生まれる熱や湿気を逃がし、寒い時には必要以上に熱を奪わない。瞬間的な体感をつくるのではなく、衣服内を快適な状態へ近づけるという考え方だ。
だから、水辺だけのための素材ではない。夏専用という考え方にも収まらず、春や秋まで含めて長い期間付き合える。水陸両用という設計を、水に入るためだけの特殊なショーツで終わらせないためにも、この素材の性質が効いてくる。
「水陸両用」という言葉だけを見れば、水に入れることがこのショーツの主役に思える。しかしMEANSWHILEが作っているのは、水に入る時だけ取り出す特殊な道具ではない。日常で穿くショーツが、そのまま水辺まで対応する。その順番で考えると、この一本の見え方は大きく変わる。
ファスナーを、デザインの主役にしない
腰ポケットとバックポケットには、いずれもコンシールファスナーを採用している。ファスナーを開けた状態でもショーツの外観を大きく変えず、閉じれば水の侵入を防ぐ設計となる。
水辺で穿くことを考えれば、ファスナーには明確な役割がある。ただ、その存在まで強く見せる理由はない。そこでコンシールファスナーを選び、ショーツ全体のデザインの中へ馴染ませている。
こうした部分を見ると、機能を付けることと、それを見せることは別の話なのだと分かる。アウトドアショーツでは、ファスナーやコードといったディテールそのものがギアとしての魅力になることもある。一方、このショーツでは機能を削ることなく、その存在感だけを抑えている。それによって、水陸両用でありながら日常着として見た時のデザインが過剰にならない。
ポケットの中まで、水辺を考える
ポケットの袋布は片面のみにメッシュを使用している。内部へ入った水を抜く役割を果たすと同時に、湿気を溜め込みにくくする構造だ。
ここで面白いのは、すべてをメッシュに置き換えているわけではないこと。水を抜くという目的に対して、片面だけをメッシュにする。外から見える場所へ新しいディテールを増やすのではなく、ポケットの中で仕事をさせている。
穿いている姿だけを見て、この仕様に気付く人はほとんどいないと思う。それでも実際に水辺で穿けば、ポケットへ入った水は抜けなければならない。見える場所だけではなく、見えない場所まで用途に対して辻褄を合わせていく。こういう設計の積み重ねが、このショーツを単なる見た目だけのボードショーツにしていない。
ケアラベル一枚にも、MEANSWHILEの美学がある
そして、僕はこういう部分にこそMEANSWHILEというブランドの考え方が出ると思っている。
腰後ろのタグ部分には、ケアラベルを収納するための専用ポケットを装備している。一般的には内側へ縫い付けられるケアラベルをそのまま露出させず、ポケットの中へ収めることで、ラベルが直接肌へ触れることで生まれる不快感を抑えながら、見た目にも余計なものを残さない。
ケアラベルを収納するためだけに、わざわざポケットを一つ設ける。
もちろん、なくても服としては成立する。それでも着る人のことを考えれば、肌へ直接触れないほうがいい。そして見た目を考えても、ラベルがそのまま出ていないほうがいい。その二つをきちんと解決するために、手間のかかる仕様をあえて選んでいる。
こういうディテールは、店頭でハンガーに掛かっている状態を遠くから見ても分からない。着て街を歩いていても、周囲の人にはまず気付かれない。それでも作る側はそこを考え、設計し、実際に形にしている。
目立つ機能だけを積み重ねるのではなく、着る人がほとんど意識しない場所にまで理由を持たせる。着心地と見た目の両方を考えた結果として、ケアラベルのためだけに一つのポケットを作る。この小さなディテールにも、MEANSWHILEの美学がきちんと表れている。
細いウエストテープにも理由がある
ウエストテープには細めのデザインを採用している。フィットを調整する役割を持たせながら、余分なボリュームを抑えることで軽量化につなげ、その細さ自体をウエストまわりのアクセントとしている。
太くして存在感を出すのではなく、役割を果たせる範囲で細くする。その結果として軽さにつながり、見た目にも一つのアクセントになる。ここでも機能とデザインを別々に考えるのではなく、一つのディテールの中で両方を成立させている。
37.5 Technology、コンシールファスナー、水抜きを考えたメッシュ、ケアラベル収納ポケット、細めのウエストテープ。こうして一つずつ拾っていけば、このショーツにはいくつもの機能と工夫が入っている。
それなのに、完成した姿は機能の塊には見えない。
その先に残る、一本のショーツ
水辺まで対応できることは、AMPHIBIOUS BOARD SHORTSの大きな機能だ。ただ、それだけならアウトドアブランドにも選択肢はある。
LAMPAがこの一本に惹かれるのは、37.5 Technologyや水抜きを考えたポケットだけではない。ファスナーを目立たせず、ポケットの中へ機能を隠し、普段は見えないケアラベルの収め方にまで手を入れる。細かな仕様を一つずつ見ていくと、どこにも単なる飾りではない理由が通っている。
これだけ色々やっている。
それなのに、穿いてしまえば、最後に残るのは一本のショーツだ。
AMPHIBIOUS BOARD SHORTS MW-PT26109は、水陸両用であることや37.5 Technologyの機能だけで選ぶショーツではありません。細部まで見れば驚くほど色々なことをやっているのに、穿いた姿にはそれを背負わせない。散々このショーツの機能について書いてきましたが、最後に見えるのは、普通に格好いい一本のショーツです。そこにMEANSWHILEの美学があり、LAMPAがこの一本を選んだ理由があります。
