2026/08/08 00:51



LAMPA CITY STANDARD
~東京カジュアルの正統派~
THING FABRICSの黒TシャツとSTILL BY HANDのスラックスを着た男性

A Moment of the City / 10

好きな音楽を追いかけていたら、休日の過ごし方まで変わっていた。

板橋区在住 27歳 会社員。

HIPHOPを聴き始めたきっかけは友達だった。

最初は何となく聴いていただけだったが、いつの間にか深く入り込んでいた。

最近、とくに夢中になっているのが90年代前半から中頃のHIPHOPだ。

ハマっている、では少し足りない。

とりつかれていると言った方が近い。

気になる曲を見つければ、そのアーティストを調べる。

知らない名前が出てくれば、そこからまた別の音へ進んでいく。

今では休日になるとレコード屋へ足を運び、中古盤を一枚ずつチェックする時間も楽しみのひとつになった。

Instagramで見つけた、高円寺の服屋

そんな時、Instagramで偶然見つけたのが高円寺のLAMPAだった。

服屋のアカウントを見ていたはずなのに、時々HIPHOPや音楽の話が出てくる。

店主も90年代HIPHOPが好きらしい。

投稿を見ているうちに、最近聴き始めた人ではなく、実際にあの時代を通ってきた人なのではないかと思うようになった。

高円寺なら板橋からもそれほど遠くない。

ちょうど夏物も欲しかった。

それくらいの軽い気持ちで、休日に店へ向かった。

最初は普通に服を見ていた。

Tシャツやパンツを見ながら話しているうち、気になっていた90年代HIPHOPの話を振ってみた。

そこから会話の空気が変わった。

NASが日本へ来た時、DJを務めていたのがBIZ MARKIEだったこと。

ARTIFACTSやMOBB DEEPのライブを、渋谷のCAVEで観たこと。

当時のクラブやレコード、東京でHIPHOPを聴いていた頃の話が次々と出てくる。

今は音源や古い映像から知るしかない時代を、実際にその場所で見ていた人の話だった。

いつの間にか服を見る手が止まっていた。

服屋へ来たはずなのに、90年代の東京とHIPHOPの話を聞いている時間の方が長くなっていた。

黒いTシャツとグレーのスラックスで東京の街を歩く男性

レコード屋を回る日の服

話はそのままレコード屋巡りへ移った。

せっかくの休日だ。

店を出た後は下北沢まで行き、レコード屋を何軒か回ることにした。

ならば、今日着ていく服もここで決めてしまう。

夏の東京を歩く。

一軒見たら、また次の店へ向かう。

動きやすさは欲しい。

暑い時期だから、着ていて身体に負担が少ないことも大事だった。

いろいろ試着した中で選んだTシャツが、THING FABRICSのTF RECONSTRUCTION PLAIN T-SHIRTだった。

色はブラック。

これは最初から迷わなかった。

中古レコードを見ていると、気付けば指先は真っ黒になる。

油断していると、気付かないうちに服を触って汚してしまうこともある。

だから昔から、レコード屋へ行く日は黒を着ることが多い。

この日の行動を考えれば、自然な選択だった。

さらに店主から、このTシャツに使われている生地の話を聞いた。

人間の身体が快適な状態を保つための37.5℃という考えをもとにした素材で、その開発のヒントになったのは阿蘇山周辺の砂風呂だったという。

砂に埋まることで身体が心地よい状態に保たれる仕組みに着目し、火山砂由来の活性粒子を繊維へ応用した。

見た目はシンプルな黒いTシャツだ。

だが、その背景を知ると少し見え方が変わる。

今日みたいに真夏の街を歩き回る日なら、一度試してみたくなる。

パンツはSTILL BY HANDのワンタックジャージースラックスにした。

名前の通り、ジャージー素材を使ったパンツだ。

コットンならではの肌触りがあり、通気性もある。

さらにストレッチが効いていて、脚を動かした時にも窮屈さが少ない。

ただし、見た目からスポーツウェアを連想することはなかった。

普通にスラックスとして見える。

Tシャツにジャージー。

文字だけ並べれば、少し中学生っぽい気もする。

この服を試着した時は、「Tシャツにジャージーって、中学生みたいかな」と少し思っていた。

それでも鏡の前に立つと、その印象はなかった。

今日はこれで行くことにした。

下北沢のレコードショップへ入る男性

下北沢でレコードを探す

LAMPAを出て、下北沢へ向かう。

駅を出れば、外はまだ夏の日差しが強い。

最初のレコード屋へ入り、棚の前に立つ。

レコードを一枚ずつチェックして、また次の店へ向かう。

一軒見終われば外へ出る。

少し歩いて、また次の店へ入る。

気になる盤があれば手を止める。

なければ、また次へ進む。

こうしていると、休日の時間は驚くほど早く過ぎていく。

Tシャツには、接触冷感の生地を着た瞬間に感じる冷たさはない。

ただ、歩いていて暑さがまとわりつく感じが少ない。

「冷たい」というより、「暑くない」。

実際に街を歩いてみると、その感覚の方が近かった。

パンツもよく伸びる。

長く歩いていても脚の動きを邪魔しない。

気付けば、普段より歩くペースまで少し速くなっていた。

今日は何か見つかるかもしれない。

下北沢のレコードショップで中古レコードをチェックする男性

探していた一枚

その予感は当たった。

前から探していたDJ CITIの限定7インチ。

何気なくチェックしていたレコードの中に、それがあった。

何軒も歩いた疲れが、その瞬間だけ消えた。

高円寺へ来た時には、夏服が欲しかっただけだった。

それが店で90年代HIPHOPの話になり、そのまま下北沢へ来て、最後には探していたレコードまで見つかった。

なんだかLAMPAは縁起がいいのかもしれない。

そんなことを考えながら、買ったレコードを持って駅へ向かう。

途中で、ふと今日の服装を見る。

黒いTシャツに、ジャージースラックス。

試着した時には、中学生みたいかもしれないと思った組み合わせだった。

でも、よく考えてみれば違った。

90年代のHIPHOPを追いかけながら何度も見てきた、力の抜けたスタイルにもTシャツとジャージーは普通にあった。

むしろ、今の自分が夢中になっている世界に近い。

そう考えると少し可笑しくなった。

夏服を探しに行った一日が、好きな音楽の話につながり、そのまま探していた一枚まで連れてきた。

レコードの入った袋を手に、下北沢の駅へ歩いていく。

家に着いたら、まずガリガリ君を食べながら
この7インチに針を落とそう。