2026/08/01 00:11

A Moment of the City / 09
都内在住、47歳。セレクトショップのバイヤー。
高円寺のセレクトショップ「LAMPA」の店主・遠山さんとは昔からの付き合いだ。同じブランドを扱うことも多く、展示会で顔を合わせれば新作について話したり、お互いのセレクトから刺激を受けたりしてきた。
7月末になると、スマートフォンには展示会の案内が次々と届き始める。
セレクトショップでは、春夏と秋冬を中心に年二回、各ブランドが展示会を開催する。届いた招待状やメールを確認し、興味のあるブランドへアポイントを入れ、一日に何件もの展示会を回る。
店頭に並ぶのは、半年以上先の服だ。
実際に袖を通し、生地の質感やシルエットを確かめる。ブランドの担当者から新しいシーズンの説明を聞き、自分の店に並んだ姿を想像しながら、一着ずつオーダーを決めていく。
展示会場はブランドのオフィスで開催されることもあるが、多くはギャラリーを借りて行われる。そして、そうした会場は駅から少し離れた場所にあることがほとんどだ。
この仕事は、とにかく歩く。

原宿の店を出ると、真夏の熱気が一気に押し寄せてきた。
今日は、まだ何ブランドか展示会を回らなければならない。
真夏を快適に過ごすことだけを考えるなら、スポーツウェアという選択肢もある。
でも、ブランドの服を見に行く日に、安易に快適さだけを選ぶのも少し違う。バイヤーという仕事をしている以上、自分が着る服にも、きちんと理由があってほしい。
快適でありながら、ファッションとしても格好いい。
そんな日に自然と選ぶのが、MOUT RECON TAILORだ。
真夏の展示会を快適にする一枚
MOUT RECON TAILORは、アウトドアブランドやスポーツブランドとは少し違う。
最新のミリタリーウェアに使われる技術や素材を、都市で着るファッションへ落とし込む。その独自の発想と、生地に対する徹底した向き合い方が面白いブランドだ。
毎シーズン、展示会でブランドから資料を受け取るたびに驚かされる。
もはや洋服の生地説明という範囲を超えた内容で、素材が開発された背景や構造、機能まで細かく記されている。「ここまで書くのか」と思うほどだ。
今日着てきたのは、POLARTEC DELTA TACTICAL T-SHIRTS。
フリース素材でも知られるPOLARTEC社が開発した高機能メッシュ素材「DELTA」を採用した一着だ。
優れた吸水速乾性と高い通気性を備えたメッシュ構造が、汗を素早く外へ逃がし、熱や湿気を効率よく排出する。汗をかいても肌面がべたつきにくく、衣服内を快適な状態に保ってくれる。
真夏の東京で展示会を何件も回る日には、まさにうってつけの素材だ。

原宿から展示会が行われているギャラリーまで歩く。
信号待ちを繰り返しながら真夏の日差しの中を歩いていても、ほかのTシャツと比べて明らかに快適だった。
汗をかいても、生地が肌にまとわりつくような不快感が少ない。メッシュ構造によって服の中に熱がこもりにくく、歩き続けても想像以上にさらっとしている。
もちろんデニムやアメカジのような服も好きだ。
ただ、真夏の展示会を一日に何件も回るという条件では、こうした高機能ウェアの良さを改めて実感する。
快適だから着るのではない。
服として格好いいから、自然と手が伸びる。

展示会でしか分からないこと
ギャラリーへ到着し、冷房の効いた会場で少し汗を落ち着かせる。
新しいシーズンの説明を聞きながら、気になった商品を実際に試着していく。
ハンガーに掛かっている状態では気づかなかったシルエットや、生地の落ち方、身体を動かしたときの着心地。担当者の話を聞きながら鏡の前に立つことで、初めて見えてくることがある。
展示会は、単に商品を仕入れる場所ではない。
ブランドがどんな考えで服を作り、何を新しいシーズンで表現しようとしているのか。その空気を直接感じ、自分の店に並べる理由を見つける場所でもある。
展示会シーズンになると、遠山さんと顔を合わせる機会も自然と増える。
同じブランドを扱っていても、店によって見る視点は違う。どの商品を選ぶのか、どこに魅力を感じるのか。そんな話をする時間も、この仕事の楽しみの一つだ。
ギャラリーを出て、スマートフォンを見る。
次のアポイントまで、あと二十分。
今日は、まだ何ブランドか回らなければならない。
真夏の東京は、相変わらず暑い。
でも、これなら最後まで乗り切れそうだ。
そう思いながら、次のギャラリーへ向かった。
