2026/07/05 14:44



STILL BY HAND ラグランスリーブTシャツ CS06262


感じ取れますか?細部に宿る、卓越したセンスを。


Tシャツほど、デザイナーのセンスが出る服はないと思う。

使える要素が少ないからだ。

襟で見せることもできない。
ジャケットのように構築的なデザインで魅せることもできない。
基本は、生地と身頃と袖。

だからこそ、何を選び、どう組み合わせ、どこを少しだけ動かすか。
そのわずかな差に、ブランドの力量が出る。

このCS06262を見た時、僕は改めて思った。
STILL BY HANDは、やっぱり上手い。



上品なTシャツ。そこで終わらせない。

生地には、ハイゲージで編み立てたコットン100%の天竺素材を使用している。
目の細かな表面には、上品な光沢。
肌に触れると滑らかで、柔らかさの中には適度なハリもある。
一枚で着ても身体のラインを拾い過ぎず、自然に綺麗なシルエットを作ってくれる。

カジュアルなコットンTシャツなのに、どこか品がある。
ラフに着ても、ラフになり過ぎない。

ここまでなら、よく出来た上品なTシャツだ。
でも、STILL BY HANDはそこで終わらせない。
この綺麗な生地に、あえてラグランスリーブを組み合わせた。



綺麗にまとめない。その判断が面白い。

ラグランスリーブと聞くと、僕はまずスポーツウェアやスウェットを思い浮かべる。
肩の動きを妨げにくい構造。
斜めに走る切り替え。
どこかラフで、スポーティーな空気。

一方、このTシャツに使われているのは、上品な光沢と滑らかさを持つハイゲージ天竺だ。

上品な生地。スポーティーなラグラン。

普通なら、どちらかに寄せると思う。
綺麗に見せたいなら、全体を綺麗にまとめる。
スポーティーに見せたいなら、そちらへ振る。

でも、STILL BY HANDは揃えない。あえて、ずらす。
異なる空気を持つ二つの要素を組み合わせ、その間に生まれるわずかな違和感を、一着の魅力に変えてしまう。

僕は、こういうデザインが好きだ。

一目でわかる派手な仕掛けではない。
でも、見れば見るほど「なぜか良い」と感じる。
その理由を探していくと、ちゃんとデザイナーの意図に辿り着く。
このTシャツには、それがある。



前はラグラン。後ろはセットインに見える。

通常、ラグランスリーブなら前も後ろも、肩から脇へ斜めに切り替えが入る。
でも、このTシャツは違う。

前から見ればラグラン。
後ろから見れば、まるでセットインスリーブ。
一着の中に、二つの異なる袖付けの表情を共存させている。

最初に見た時、僕も一瞬引っかかった。
「なんか違う。」
でも、その違和感の正体がすぐにはわからない。
もう一度見る。
そこで初めて、後ろの切り替えに気付く。

これが面白い。

大げさに主張しない。
説明されなければ、気付かない人もいるかもしれない。
でも、服が好きな人ほど、こういう小さな違和感に反応してしまう。
そして構造に気付いた瞬間、ただの無地Tシャツだったものが、全く違って見えてくる。



バイヤーとして長く服を見てきたけれど

Tシャツ一枚でここまで考えるブランドは、そう多くない。

大きなロゴもない。派手な配色もない。奇抜なシルエットでもない。
それでも、普通の無地Tシャツでは終わらない。

何を選ぶか。何と組み合わせるか。どこを揃え、どこをずらすか。
その積み重ねが、一着の完成度を変えていく。

シンプルな服ほど、誤魔化しは利かない。
使える要素が少ないからこそ、デザイナーの判断そのものが服に出る。

上品なハイゲージ天竺に、スポーティーなラグラン。
前はラグランなのに、後ろはセットインに見える。
普通なら揃えるところを、あえてずらす。
しかも、その違和感を見せつけない。
何事もなかったかのように、一枚のTシャツとして成立させる。

そこに、STILL BY HANDの凄さがあると思う。

一目では伝わらない。
でも、知れば知るほど面白い。
着れば着るほど、そのバランスの良さがわかってくる。

シンプルに見えて、全くシンプルではない。

感じ取れますか?
細部に宿る、卓越したセンスを。